算数難問で“教室の学力格差”を斬る
新卒教師の疑問・質問
Q1 ちょっと、待って。難問なんて出来る子が活躍するのでは?
A1 難問の場合、そう単純ではないところが面白いんです。
ふだんお勉強が得意な子が間違えることがあります。教科書の公式通りではなく、あれこれ考えなくてはいけません。ササッとやって得意そうに持ってきた子が子が何度も✕をもらいくやしがる。時間をかけてコツコツと取り組む大人しい子が〇をもらうことがあります。「逆転現象」です。
クラスみんなでワイワイ取り組む中で、勉強ができる子もできない子も同じようにたいへん熱中します。
Q2 じゃあ、その「難問1問選択システム」とやらを、1分でわかるように解説して。
A2 難問はいろいろな問題が5問集まっています。解けそうな問題を自分で選べます。計算が苦手な子は、一目で分かる図形問題を選ぶことができます。
初めて子どもたちに説明するときには、次のように──。
① 「とっても難しい問題です。『難問』と言います。難問5問のうち、どの問題でもいいですから1問だけ選んで解きましょう」
② 「1問解けたら100点です」
(子どもたちからは…)「たった1問?」という質問が出るでしょう。
③「2問目をどうしても解きたい人は解いてもかまいませんが、もしも正解しても…」(と言って以下のように板書)
【板書】「100点+100点=100点です」
(子どもたちからは…)「ええっ!?」という声があがるでしょう。
④「そして、もしも2問目を間違えたときは…」(と言って以下のように板書)
【板書】「100点+0点=0点です」
(子どもたちからは、再び)「ええええ~!?」という叫び声が…。
⑤ 「先生が5問読みます。1問選んでください」(これは、教師が読んであげないと、全体を見ないで1問目に飛びつく子がいるからです)
⑥ 「どの問題に挑戦したいですか。ちょっと聞いてみよう。1番、2番、3番、4番、5番(この質問でクラスの傾向をつかみます)。どの問題でも100点に変わりありません。解けなかったら別の問題に変えてもかまいません」
⑦「できたら持っていらっしゃい。用意、始めっ!!」
Q3 マジ、その難問、ここで取組んでみたいんだけど…?
A3 例えば4年生だったら、こんな難問。
「ある日の昼の時間は、夜の時間より1時間長い。昼と夜はそれぞれ何時間か?」
4年生くらいですと、問題を出す前に、「一日は何時間ですか? 24時間ですね」と押さえておく場合もあります。「1日24時間」がわからないと問題を解く土台がわからなくなってしまいますから。
子どもは、
「24÷2=12 昼12+1=13(時間) 夜12-1=11(時間)」
と書いてもってきます。「13-11=2」で昼が2時間長くなってしまいます。当然×です。
教師は通常教えることが仕事ですから、このような問題は解き方を教えたくなります。ヒントを出したくなります。しかし、ここは教えることをグッと我慢しなくちゃいけません。
教えない。ヒントも出さない。ひたすら、
「残念!」
「頑張ったなあ」
「おっ! なるほど」
と明確に×をつける。バツではなくて✓(チェック)をつけてもかまいません。ニコニコしながら否定する。
やってみるとわかりますが、×をもらった子どもたちは燃えます。
「えー? そんな!」
「なぜだ?」
「くやしい!」
誰もできないから自分だけ抜け出ようと張り切ります。
「できないようだから答えを教えましょうか?」
「降参ですね?」
と挑発すると、
「待ってー!」
「教えないでー!」
と叫びます。こうして教室中が熱中します。そのうち正答を持ってくる子が出ます。
「●●さん、すごい! 〇だ」
教室に衝撃が走ります。〇をもらった子は跳びはねて喜びます。
どう教えるかのアンサーは、「教えないで待つ」です。
Q4 “みんな、難問やろうよ”って、子どもに声かけすれば、ノリノリ授業になるの?
A4 一度でも難問の授業を体験した子たちは、「先生、難問やりたい!」「難問やりましょう!」とリクエストしてきます。
「今度の問題は難しいです。きっと誰も解けないでしょう」
などと挑発すると、
「よーし、やってやる!」
と盛り上がります。