“神業授業”から“学級・学校業務の仕事術・時短術”まで。
現場教師のための「働き方改革への対応策」を大公開!
■キーワードは「時間を生み出す」
著者は学級担任をするかたわら、週末は各地でセミナーの講師を務め、雑誌の連載や複数の書籍の執筆を抱える日々──。誰もが思う。いったい、あの先生は、どうやってあれだけの仕事量をこなしているのだろう?
しかし、著者は言う。「私も最初からこのような仕事をこなせていたわけではないんです」と。
教師になりたての頃は、研究授業の準備に3ヶ月をかけたり、参観日の前日には深夜近くまで残って準備をしていたという。しかも提出物は学校で一、二を争うほど遅く、通知表の完成は、締め切り日の勤務時間内にできたことはなかった。
しかし、当時、参加したセミナーで、講師の忙しい日常を聞き、自分とはかけ離れた講師の仕事量の話を聞いても、「自分には無理だ」とは思わなかったという。むしろ、「どうやったら、そんな仕事ができるのだろうか?」ということに興味を持ったというのである。同じ人間なのだから、全ては同じにはできなくても、今よりもできるようになることがあるはず、と。
そこから、著者は「仕事術」に興味を持つようになる。すると、今まで見えていなかったことが見えるようになってきた。
まず、校内の先生で仕事が速い人の行動。たくさんの校務分掌をこなし、6年生を担任し、それでいて定時の17時に帰宅する先生がいる。しかも決して忙しいそぶりは見えない。いつもゆったりとしていて、職員室でも冗談ばかり言っている。
ある職員会議のあと、その先生がすぐにコピー機に向かっていた。何をコピーしているかを覗いてみると、子どもの分担が書かれた掃除の表だったという。直前の職員会議で出された入学式の掃除分担表。そこには6年生が掃除をする場所とその人数が割り振られていた。その分担を職員会議中に、その場で書き込んでいたのだ。そして、それぞれの担当の先生に、どの子が掃除に行くのかがわかるようにコピーして渡していたのである。
ここからは著者は、自分になかったのは「仕事をその場で行う」という視点だと気づき、その場でできることは、すべてその場ですることを意識するようになる。「掃除分担表作成」「アンケートの作成」などをその場で済ませれば、30分の時間が空く。本来であれば、これだけの時間がかかっていたものが、これだけ短縮できたと思うと仕事へのモチベーションも上がった。そのような体験から、「時間は生み出すものだ」という確信にいたったという。
■仕事が早いことは、まわりも幸せにする
仕事術に興味を持った著者は、俄然、いろんな工夫を重ねる。しかしそのなかで、ある時、気づいたのだという。
「仕事が早く終われば自分が得をすると思っていた。しかし、その考えは間違っていた」と。
アンケートを早く出すようになって、担当の先生に感謝されたことがきっかけだった。
「もう出してくれたの? 早いから助かるわ」
「早いから助かる」という概念が自分にはなかった。しかし、その言葉で、担当の方からしてみると早く集まればそれだけ自分の時間が生み出せるということが理解できた。仕事が早くなるということは、まわりも幸せにするということなのだ、と。
著者はそこからは、さらに仕事術に興味を持ち始めるようになる。そして著者が恩師から学んだのは、「時間をかけないのに、仕事の質が上がる」ということだという。
仕事というのは、時間をかければいいものができる。時間をかけないのは適当にやっているのと同じで、良くないやり方なのだ──。著者のそんな思い込みは、恩師の言葉に触れて見事に崩れさる。
例えば、通知表の所見の書き方。ノートの見開き2ページに名簿を貼って、そこに所見のメモを書き込んでいく。運動会や学習発表会などの行事はもちろん、何か熱中した学習などの一場面を文で書き込んでいく。その日に、その場で書き込む。まさに「その場主義」である。
それを通知表の所見欄に転記していけば所見が完成する。あっという間にでき、しかも、実際にその場面を切りとっている文は、その子の姿が映像で浮かんでくるような生き生きとした表現になっている。今までの10分の1以下の時間で、今までの何倍も素晴らしい所見が完成する。これこそが、仕事術の神髄である。
■「コピーをとる時も何か一緒にできることはないか?」
これは、著者がその先輩教師から聞いた言葉である。20代の頃の著者にとって衝撃だったという。著者はこの言葉から、仕事をセットで行うという着想を得る。。
また別の先輩教師の一言も、著者の姿勢を大きく変えた。
「5年前の自分が今の仕事を抱えていたら潰れていた」
当時20代の著者にとって、信じられない言葉だった。全国を飛び回り、何でもできるあの先生が、5年前には今の仕事は無理だったと話している。ならば、自分も頑張れば5年後には今とは違う自分がいるはずだ──。
今や猛烈な量の仕事をこなし、かつ、その授業はといえば、同時並行でどの子にも個別の「神業」と言われる指導をおこなう著者。
全国の多くの教師が過労死ライン超えの長時間労働にあえぐ現在。改善策として話題となるのは変形労働時間制だ。だが、実態にそぐわないその制度では「教職を続けられない」という悲痛な叫びが相次いでいる。
教師が疲弊せず、子どもたちは達成感を得るには、どうしたらいい?
著者が訴える「仕事術・時短術の3大原則」とは──
・「作業1」の前に「作業0」を仕組む
・「その場主義」を徹底する
・「異なる仕事」を「セット」でおこなう
そして著者はこう続ける。
「教育界で働き方改革の重要性が言われるようになってから、しばらくの時間がたった。しかし、なかなか改善のめどが立っていないのが現状である。
学校は多忙を極める。新しい取り組みはどんどん学校に入ってくるのに、今まであった取り組みが減るわけではない。多くの先生方が現場で奮闘をしている。そのような状況からか、今までにあまりなかった仕事術に関する講演の依頼もいただくようになった。そして、それが好評を博している。そこから、学校現場で奮闘している先生方の役に立つことがあれば紹介したいという思いを持つようになった。
通知表の締め切りにも間に合わなかった私が、どうやって時間を生み出す仕事ができるようになったのか。「時間を生み出す」というキーワードで本書をご覧になっていただきたい」
学級担任・学年団の仕事、黄金の3日間、主要教科+体育・図工など教科教育、特別支援教育コーディネーターなどの校務分掌の仕事、運動会・卒業式など行事指導まで──。
ケース・スタディで納得! 現場教師のための「働き方改革への対応策」決定版!