マット運動、鉄棒、跳び箱──。この1冊ですべての器械運動の指導ができる!
運動が苦手な子は、運動のイメージを持てないのがその理由。
それは体育指導が苦手な教師も同じ。
しかし……はじめは「え~、いやだ! できない!」と言っていた児童が、授業の終わりには「またやりたい!」──こんな声が次々に上がる体育の授業が、本書を使うと実現する。
■教科の専門性が問われる時代の体育指導とは?
本書が紹介するのは新学習指導要領に沿った指導法である。新学習指導要領では、小学校でも教科担任制が導入される。教科の専門性が問われる時代の到来である。
器械運動の高学年の学習内容は、専門的な指導力がないと難しい教材が並んでいる。「マット運動」ではロンダート、伸膝前転、伸膝後転、倒立前転、倒立後転、「跳び箱運動」では首はね跳び、頭はね跳びなどである。これらは専門的な指導のもとに行わなければ、技能の向上は図れない教材ばかりであり、怪我にもつながる。
本書はそのような教科担任制時代の体育指導の書として、プロの体育教師としての指導技術を身に付け、専門の力量の習得を図ることを目指している。しかし、いきなり専門的な指導を目指しても、プロの体育教師にはなれない。専門的な指導力を身に付けるには、どの子供もできるようになる基礎的な指導も必要である。基本的な指導力を獲得したあと、より高度な専門性を求めるのである。
そこで本書では、体育指導の苦手な教師、さらに力量を高めたいという教師にとって役立つよう、次のような2段階の構成をとっている。
基礎的な指導に重きをおいた、主に低学年の内容。
教科担任制時代の指導のあり方を目指した、主に中学年から高学年の内容。 |
具体的な紙面としては、教材ごとの場づくり、指導の方法・手順、コツ・留意点が、全てイラストや写真で示されている。
■「考える体育」
現在、「考える体育」ということが言われている。
体育科においては、運動が「できる」ことと同様に、「わかる」ことも大切なのである。
体育科における「わかる」とは──
①運動の技能的なコツや動きのイメージをつかむこと
②自分や友達の動きを分析して課題がわかること ③課題を克服するための手段や練習方法がわかること |
つまり、「お互いに方法やコツを伝え合う」「友達との関わりが生まれる」「アドバイスにより技が高まるような学習ができる」──この流れが、体育科における「主体的・対話的で深い学び」につながるのである。
本書ではその1つの方法として「学習カード」を用いている。学習カードには、内容、手順・方法、技ができるようになるポイント、技の質を高めるためのポイント、場づくりの工夫、評価基準の設定が示されている。教材の1つひとつに即して、毎時間の評価を通して自己の学習を振り返り、改善点を直していけるように構成されている。
以下は、「側方倒立回転」の例。
レベル 内容 指導のポイント 評価基準
1 川跳び 両手→両足の順に跳ぶ ◎5回 〇3回 △1回 2 跳び箱で川跳び 腰を高く上げて跳ぶ ◎5回 〇3回 △1回 3 くの字側方倒立回転 手―手―足―足の順で回転する ◎5回 〇3回 △1回 4 腰の伸びた側方倒立回転 おへそが正面を向く ◎腰が伸びる 〇少し 5 連続で側方倒立回転 腰が伸びたスムーズな回転をする △曲がる |
この順番で学習していくと、どの子供も側方倒立回転ができるようになる。
技のポイントが示されているので、上述の通り、子供同士の教え合いができ、お互いに方法やコツを伝え合うことで友達との関わりが生まれ、アドバイスにより技が高まる。その結果として、運動することの楽しさが味わえる。
■動画、全48本!
本書に掲載されたQRコードからは、学習カードと完全対応した、全48種目の動画を視聴可能。授業中に教師と子供が一緒に見ることもできる。
体育指導の苦手な教師は、文字だけではイメージが湧かない。実際にどんな方法で、どのような手順で、どのような場で指導するかを、動画で見ることによって理解できる。これは、体育指導の専門性を習得する場合も同じである。
そして運動の苦手な子供にも得意な子供にも共通して大切なのも、動きのイメージ化である。
動画はテロップと音声解説により子供が見ても分かるようになっており、動きのイメージが簡単に理解できる。教師にとっては、動画の活用により、より短時間で指導ができるようになるだろう。
子どもが主体的に学べる学習カードと、イメージ化を図る動画が一体化した本書により、今までになかった新しい学習が可能に──。サッカーの始まりやマラソンの42.195キロという距離のワケなど、体育教育に活かすことができるスポーツの「ミニコラム」も満載!